「今月の返済、正直きつい…」
「このまま返せなかったら、もう終わりなんじゃ…」
資金繰りが苦しくなると、頭の中は一気に真っ白になります。

ここで覚えておいてほしいのが、
返済できない=即倒産ではありません!
銀行には条件変更(リスケ)という、月々の返済額を一時的に減らすことができる仕組みが存在します。
ただし、リスケには借入がある全ての銀行で一律に行うなど暗黙のルールがあり、やり方を間違えると金融機関との関係が一気に悪化することもあるので注意が必要です。
- 条件変更(リスケ)でできること
- 要注意の暗黙のルール
- 条件変更のメリットや注意点
- 正しい条件変更の手順
初めての条件変更でもスムーズに手続きができるよう、現場の実務感も交えながらわかりやすく解説します。
条件変更(リスケ)とは返済条件の緩和措置


条件変更(リスケ)は、月々の返済負担を軽くして、事業を立て直すための手段です。まずはリスケの基本と、暗黙のルールを解説します。
条件変更(リスケ)でできること
条件変更は大きく5つのパターンがあります。
| 変更内容 | 効果 | 金融機関の見方(難易度) |
|---|---|---|
| ①返済の減額 | 返済を可能な金額に調整 | 比較的通りやすい |
| ②元金据置 | 元金の返済を止める | 交渉次第 |
| ③期間延長 | 返済額の軽減 | 交渉次第 |
| ④返済日変更 | 資金繰りの調整 | 通りやすい |
| ⑤金利変更 | 利息負担の軽減 | 難易度高い |
実務上は①返済の減額と②元金据置が基本的な対応となります。
①返済の減額
毎月30万円の元金返済を10万円に減らすなど、返済額を可能な範囲で調整する手法。見直し期間は6か月~1年が一般的です。
②元金据置
元金の返済を止めて、利息のみ支払う手法です。金融機関としては①返済の減額から検討しますが、どうしても苦しい場合は元金据置が受け入れられる可能性もあります。
③期間延長
5年返済を7年返済にするなどして、借入期間を延長し返済額を減らす手法ですが、現場ではあまり採用されることはありません。資金繰りが悪い企業に、わざわざ期間を延ばす新たな契約を与える理由がないからです。
④返済日の変更
毎月の返済日を売上入金日以降にズラす手法です。効果は限定的で根本的な改善にはなりません。
⑤金利の変更
金利を下げれば毎月の返済額を減らすことができます。しかし資金繰りが悪化している企業の金利を下げることは現実的ではありません。
リスケは「全ての銀行で一律」が暗黙のルール
条件変更(リスケ)は原則として借入がある金融機関すべてで、同じ条件(または同じ考え方)で実施するのが暗黙のルールです。
一行だけのリスケが認められない理由
「うちの返済をせず、なぜ他行だけ普通に返してる?」
この質問に答えることができないのが、一行だけのリスケが認められない理由です。実務では、メインバンクが調整役になり、全行で条件を揃える方向に進みます。
例外はある?
借入の性質が明確に違う場合(短期つなぎ、預金担保など)、例外的な扱いになる可能性はあります。
ただし勝手に判断してはいけません。必ず事前に金融機関へ相談してください。
条件変更(リスケ)のメリット・デメリット


| メリット | デメリット |
|---|---|
| 資金繰り安定 経営の立て直し | 追加融資不可 信用力の低下 長期化しやすい |
条件変更(リスケ)のメリット2選
条件変更をするメリットは以下の2つ。
- 返済が減って資金繰りが安定
- 経営を立て直す時間が生まれる
最大のメリットは、月々の返済額が減ることで資金繰りが安定する点です。
また、返済に追われて改善策に手が回らない状態から、固定費削減・価格改定など、返済原資を作る施策に集中する時間を確保することもできます。
条件変更(リスケ)のデメリット3選
条件変更のデメリットは大きく3つ。
- 追加融資は原則不可
- 金融機関からの信用力低下
- 回復せず長期化しやすい
条件変更をすると、追加融資はほぼ受けることができなくなります。通常の返済ができない状態なので、金融機関からの信用力は低下し、既存債権の回収が優先されます。



条件変更から通常返済に戻せても、新たな借入を相談するには1年ほどの経過観察が必要です。
また、返済を止めたことで安心してしまい、改善がなかなか進まない点も条件変更の怖いところ。
通常返済に戻せる企業の割合は20社に1社くらいというのが、信用金庫の現場の感覚です。
条件変更(リスケ)を依頼する前に確認すべきこと


金融機関に条件変更を依頼するには、最低限3つの確認が必要です。
- 現状の把握
- 今後の改善策
- 必要書類の準備
まずは資金繰り表で現状を見える化する
リスケは「なんとなく返済が苦しい」では通りません。数字が必要です。
最低でも、3~6か月程度の資金繰り表を用意し、以下を説明できる状態にしましょう。
- いつ・いくら足りないのか
- 返済をいくら減らせば回るのか
- いつから改善が見込めるのか
資金繰り表の作りかたについては、今後更新予定の記事でテンプレート等も紹介していきます。
条件変更中の改善策を作る
目的がないリスケは敬遠されます。
金融機関は「返済を止める理由」よりも、どうやって戻すのかを見ます。
- 値上げ交渉で利益率を改善
- 固定費など経費の削減
- 新規取引を獲得し売上増加
実際にはなかなか難しいかもしれませんが、少なくとも改善するためのプランは用意しておきましょう。
条件変更の依頼時に最低限そろえるもの
- 試算表(直近)
- 資金繰り表(3~6か月)
- 借入一覧(全ての借入状況)
- 経営の改善策(箇条書きでOK)
- 税金・社保の滞納状況(あるなら正直に)
なお、借入一覧は金融機関だけでなく、消費者金融や不動産担保ローンなどすべての借入を記載してください。
条件変更(リスケ)の依頼方法と実行までの流れ


条件変更の流れをステップ形式で解説します。
メインバンクへ相談
いきなり全行に同時連絡すると、情報がバラつき混乱します。
最初は、調整役になるメインバンクに相談してください。
連絡は「今後の返済について相談したい」でOKです。
返済条件のたたき台を作る
事前に準備した資金繰り表と改善策を提示して、返済条件の希望を伝えましょう。
希望の条件に沿って、各金融機関の返済額をメインバンクが調整してくれます。
すべての金融機関へ連絡
メインバンクで決められた返済条件をすべての金融機関へ伝えます。
必ずメインバンクに相談済みであることも伝えてください。
稟議審査
求められた書類は速やかに提出しましょう。
条件変更の審査は早くても2週間程度の時間を要します。
契約・実行
審査が通ると、契約を締結し返済条件の見直しが実行されます。
銀行によって手数料や、保証協会の保証料が必要になることがあるので注意が必要です。
条件変更(リスケ)中の注意点


条件変更は実行後にも注意すべき点があります。
- 資金調達は必ず事前相談
- 代表者への返済・貸付もNG
- 情報開示を渋らない
リスケ中の新たな資金調達は必ず事前に相談
リスケ中は金融機関からの借入が制限される一方で、不動産担保ローンやファクタリング等で資金調達をすることは可能です。その場合、必ず事前に金融機関へ相談してください。
新たな借入の返済が加わると、「全行一律」の暗黙のルールが崩れ、次回のリスケ時に問題となります。
重要なのは「資金調達するな」ではなく、順序と説明です。
代表者等への返済や貸付も原則禁止
金融機関が一番嫌うのはこの構図です。
返済を止めているのに、身内(代表者・関連法人)に資金が流れている。
発覚した時点で、信頼関係が一気に崩れます。
「どうしても必要」な事情がある場合でも、必ず事前相談・説明してください。
情報開示を渋らない
- 税金や社保の滞納
- 資金繰りの悪化
- 今後の見通し
言いにくいことほど、後出しは致命傷になります。「事前に言ってくれれば対応できたのに…」という経験を実際に何度もしてきました。
条件変更はすべての情報を正しく伝えることが、事業再生の手助けとなります。
条件変更(リスケ)によくある質問


まとめ:条件変更(リスケ)は延滞を防いで立て直すための手段


条件変更(リスケ)は、単なる返済の先延ばしではなく、月々の返済負担を軽くして資金繰りを立て直すための緩和措置です。



資金繰りが悪化して一番まずいのは、黙って延滞してしまうこと。
- リスケの主な手法は返済の減額
- リスケは原則「全行一律」
- メリットは資金繰りの安定
- 追加融資は原則不可になる
また、条件変更中は「地雷」を踏むと一気に関係が悪化します。特に、無断での資金調達や代表者・関連法人への優先返済(資金流出)は、金融機関が最も嫌う行動です。必要な場合は必ず事前に相談し、説明の筋を通してください。
条件変更は、正しく使えば事業を守るための有効な手段です。
返済が厳しいと感じた時点で、できるだけ早くメインバンクへ相談し、資金繰り表と改善策をセットで示す。
これが、リスケを「立て直しの一手」にするための最短ルートです。




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